SSブログ

「下流喰い」 ・・・ 絶対に手を出さないこと [実用]


下流喰い 消費者金融の実態 / 須田 慎一郎
1.My Review Rank : ★★★☆☆ +
2.Published Data : ¥735, 219Page,筑摩書房,’06/09
3.Review Point : 本日の日経新聞 7面に、 「上限金利20%以下に、貸金業法案きょう閣議決定」 の記事が載った. 2009年末~2010年始めに、刑事罰の対象となる「出資法」の上限金利29.2%を「利息制限法」での15~20%レベルに引き下げるとの内容(所謂グレーゾーン金利の廃止).
 また、今年になり、マスメディアも 「グレーゾーン金利撤廃」 を盛んに報道しているが、本書はタイムリーな内容なので紹介します.

 「グレーゾーン金利」に関しては、 2006年1月 の最高裁での 「利息制限法の上限金利を超える部分は違法」 の判決により、大きく潮目が変わった(利息制限法での上限金利は貸付額により変わるが、貸付総額100万円以上の場合 15%).
 最高裁まで争ったのは、アイフル系列の商工ローンだが、自分自身 及び、金融業界全体の首を絞める結果となってしまった.
 上記の判決の結果、 消費者金融業者が、「過払い金返還請求訴訟」を起こされると、消費者金融業者側が負けることが確実になった.
 実際に、消費者金融大手5社(アイフル, 武富士, アコム, プロミス)は、返還に関する経費として、合計で年間1500億円を計上している. 上記の記事では、消費者金融大手の9月中間期は1500~3000億円の赤字となっている.

 上記の最高裁の判決を引き出した要因は、以下の2点になる.
 ① 消費者金融業界は、儲け過ぎた.
 ② 消費者金融業界は、いい気になり過ぎた.

 ① 消費者金融業界は、儲け過ぎた
 消費者金融業界も、ゼロ金利政策(金融機関同士で融通し合う無担保コール翌日物(短期市場)の金利をゼロにする政策)の恩恵を受け儲けてきた.
 武富士の場合(05年3月期)、貸出総額1兆6000億円の調達コストは、僅か231億円(平均調達コストは1.5%程度). これに対して、貸付金の約8割が25~27%の金利で貸し付けられているため(貸し倒れが有るものの)、貸付金の利息収入は3475億円に達する.  これで儲からない訳が無い.


 ② 消費者金融業界は、いい気になり過ぎた
 ここ数年で、武富士を抜いて、業界TOPに躍り出たアイフルが(取立てもものすごいらしい)、特に、監督官庁の神経を逆撫でしてきた.
 2004年11月5日に、アイフルの創業者の福田吉孝社長が、9月中間決済報告会にて、「銀行を買収したい」 と発言し、また、上記の最高裁判決を受け、2006年3月28日 「消費者金融大手5社で、50億円を拠出し、多重債務者支援に乗り出す」 との日本銀行での記者会見の席上でも、グレーゾーン金利の撤廃を否定する発言をした.
 この結果、アイフルは、2006年4月14日 国内約1900店舗全店の業務停止処分の厳罰を受けている.

4.Summary : 題名の「下流喰い」とは、消費者金融業界が優良(ターゲット)とする顧客が変化した事を表現している.
 従来の平均顧客像は、以下の様なものだった. 消費者金融がサラ金と呼ばれていた様に、定収の有るサラリーマン相手に節度の有る商売をしていた.
 年齢は40代後半で家族有り、年収は300万円程度で、住宅ローン, 教育費のため、慢性的な金欠状態. しかし、定収も有り、家族も会社も有り世間体も考え、返済意欲も有る顧客.
 しかし、現在の顧客像は、以下の様に変化しており、若者をターゲットとし、ベタ貸し状態で借金漬けにし、自己破産すれば、破産情報を同業者の中で売買し徹底的に毟り取る.
 消費者金融大手の調査では(02年)では、年齢は、30歳未満が44%, 30~40歳が23%と若年化し、年収は、500万円未満 81%, 400万円未満 65%, 300万円未満 42%, 200万円未満 17%となる.

 消費者金融の市場規模は、約20兆円. 消費者金融の利用者数は2000万人で(延べ?)、平均借入金は101万円. 国内の就業者数が約8000万人のため、4人に1人が借りており、多重債務者は356万人. 自己破産者は05年18万4000人に達した.
 消費者金融に限らず、クレジットも便利になってきた現在、他人事では無くなり、注意が必要.

 上記の①, ②の理由の次に、③として、 「住宅ローン返済困難者の保護」 が有ると思う.
 1993年に景気対策で導入された 「ゆとりローン」で(住宅が莫大に売れた)、最初のゆとり期間5年が終わった1998年から、住宅ローン返済困難者が増加し、自己破産が10万件を超え、自殺者が3万人を超えた(前年までは各々7万件, 2万人).
 今後の新たな時限爆弾として、1999年に設けられた 「住宅ローン減税」の段階的に縮小・廃止が有る. この制度の縮小或いは、廃止段階での、自己破産, 自殺防止のために、法改正の期間を見て、政府も今動いたのではないか.


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:マネー

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。