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「若者はなぜ3年で辞めるのか」 ・・・ 実力主義と年功序列 [仕事]


若者は なぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 / 城 繁幸
1.My Review Rank : ★★★☆☆ +
2.Published Data : ¥735, 231Page,光文社,’06/09
3.Review Point : 本日の日経新聞の1面に、「大学新卒フリーター・ニート 今春9.9万人. ピークの3分の2」 とある(ピークは、2003年の14.8万人). また、"団塊の世代" の退職に備え、「07春に入社予定の大卒の内定人数は前年比13.3%増. 今後も現象傾向が続く」 とも有る.

 いかにも目出度い記事だが、問題は、フリーター・ニートに既になってしまった人の方に有る(日経新聞のグラフを見ると延べで 約150万人).
 企業の採用強化の対象となっているのは、あくまでも 「新卒者」 のみで、就職氷河期(特に1997~2002年)に就職出来ずに、派遣社員, フリーター 或いは、ニートとなった 「既卒者」 は全く対象となっていない(ここで、 「既卒者」 とは、「正社員の内定が無いままに卒業してしまったもの」).

 余りにも理不尽な話だが(中途採用で年齢が上でも、新人と同列に処遇すれば良いのではと誰もが考える)、原因は日本企業の人事制度に有る.
 「多くの日本企業が人事制度に導入している "成果主義" はあくまで枝葉に過ぎず、従来からの "年功序列" が依然として大切な根幹で有り、キャリアパスには、"一本のレール"しかない.」

 依然として、報酬は、年功序列をベースに、業種, 会社の規模により、入社何年、何歳で、幾らと相場が決まっている(成果主義により多少の差は有るが).
 この人事システムを堅持し、既得権を守るために、会社と労働組合とは、評価のルールから外れる 「既卒者」 には、頑なに門戸を閉ざしている(文系の大学院卒, 理系の博士号に非常に冷たいのも同様の理由).
 つまり、 「新卒⇒正社員のレールに一度でも乗り遅れると、二度と正社員のレールに乗れない」 のが現状の日本のシステム.

 一方、書名の「若者が3年で会社を辞める」については、2000年の調査では、本人の努力 或いは、運良く "新卒⇒正社員" となっても、大卒で3年以内に36.5%が会社を辞めている.
 これにも、上記の年功序列ベースの人事制度が影響している.

 従来の日本企業の経営は、シェア優先で、会社を拡大させることで、ポストを増やし、年功序列・終身雇用システムを維持して来た.
 しかし、現在、多くの会社では、都合の良く、成果主義を導入し、定期昇給もなくなっているため、系列(役職)が上がらない限り報酬も上がらない.
 一方、効率優先で、会社の規模の拡大が止まり(一部のグローバルな企業を除き)、更に、組織のフラット化により、ボストに限りが有る中、30~40代の中堅層以降新人も含めて、ポスト待ちの状態となっている(著者の表現では、「ポストの前に長蛇の列をなしている」).
 一部の人間は、順調にレールを進んで若い間の働きに見合う報酬を将来受けるが、半数以上の人間はポストに付くことなく、頑張りに見合う報酬を受けることなく、働き損で終わる.
 新入社員も、上のポストに居座る先輩達を見て、「彼らを食わせるために、一生ただ働きを続けるのか」と絶望感を抱き辞めてゆく.

4.Summary : 3割が辞めてゆく理由のもう一つの理由は、採用方法の変化にある.
 従来は、体育会系の「なんでもやります」 が重宝され大量に均質な人材が採用されてきたが、バブル崩壊後は、超厳選採用に変化した. 就職氷河期の厳選採用に耐えた 「仕事に対する意識が高くなり過ぎ」 ている新人は、年功序列の会社で与えられる丁稚奉公の様な仕事とのミスマッチにより、「わがまま」な発言もするし、「忍耐不足」の様に辞めてしまう.

 一方、30~40代の「心の病」の原因は、ポスト待ちで、一生下働きで終わる可能性が有ることに対する、「モチベーションの消失」と筆者は指摘している.
 キャリアパスのレールが一本しかない現状の人事制度から、一部企業で導入が試みられているキャリアパスを複線化することを提案している.

 城 繁幸 著書の光文社ペーパー・バックス 「内側から見た富士通『成果主義』の崩壊」 もかなり売れた、こちらの方が、著者が勤めていた富士通を内部から見ている点で、具体的で辛辣な内容.
 著者の本は、視点が的確で、面白い素材が含まれているが、全体の内容を要約して表現・理解するのには苦労します.


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