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「語学で身を立てる」 ・・・ 語学のプロとは [英語]


語学で身を立てる / 猪浦 道夫
1.My Review Rank : ★★☆☆☆ + モチベーションのため
2.Published Data : ¥693, 205Page,集英社,’03/02
3.Review Point : 語学を勉強するに当たり、語学のプロがどの様な実力と素養を持ち、どの様な環境で働いているのかを知るのは、モチベーションUPになる.

 例えば、産業翻訳者(最も人手が足りない)を目指し、1年間(300時間程度の勉強時間)一心不乱に勉強し、翻訳会社の試験を受けて合格しなかった場合、原因として以下の3点が考えられる(逆に言えばこれらを意識する必要が有る).
 ①語学の素質(センス)に問題が有る
 純粋に翻訳に必要な語学力だけなら、本気で取組めば習得するのに1年以上は掛からない. 1年以上掛かるのは、センスに問題が有るか、集中力が足りないか. 学習方法を誤っている場合も有るが、その誤りに気づかないこと自体にセンスに問題が有る(厳しい).
 ②産業翻訳として必要な雑学知識が不足している
 克服には一般に本人が意識してから5~6年を要す. 産業翻訳家の多くが、30代にならないと一本立ち出来ないのはこのため.
 ③日本語の文章表現力が不足している
 25歳以上で日本語の表現センスが大巾に改善された例をみない. 手の施しようがないため、語学の他の分野を目指す方が良い.

 第二 或いは、第三外国語の選択のため、各国語の翻訳市場を中心とした概観は面白く、役に立つかも. また、世界経済と日本との関わりが見て取れる.
 ・英語 : 最大にして多岐.競争も激しいため、市場をより細分化して捉える必要有り.
 ・フランス語 : 市場はそこそこの規模だが、フランス語が出来る人も多いため、専門分野を持つと強い. 教師の市場は広くない.
 ・スペイン語 : 長期的な低落状況(仕事量が少ない). ただし企業研修等の教師の市場は看過出来ない.
 ・ドイツ語 : 通訳より翻訳の方が圧倒的に大きな市場. ドイツ語の実務翻訳能力が有れば仕事には困らない.
 ・イタリア語 : 人材が不足してため、悪くない市場.
 ・中国語 : 翻訳市場は広がる一方. 北京官話, 台湾語, 広東語 等の依頼も有り. 日本語の堪能な中国人が多い.
 ・韓国・朝鮮語 : 日本語の堪能な韓国人が多い. 教師の需要は多くない.
 ・ポルトガル語 : 日系ブラジル人の労働者が日本に入ってきており、役所の文書や観光案内のため、需要は増加. 語学研修の市場も有り.
 ・ロシア語と東欧諸語 : ロシア語は大きな市場だが、競争も有り. 今後東欧諸国のEU加盟で、ポーランド, チェコ, ハンガリー語にもそこそこの需要が有り(これらの教科書にはロシア語を介したものが良い).
 ・オランダ語と北欧諸語 : オランダ語と北欧諸語(デンマーク, スウェーデン, ノルウェー)は、供給が不足し翻訳として有望な市場(翻訳レートは英語の3~4倍). 英語, ドイツ語が出来れば比較的習得し易い. フィンランド語は非常に難しいが翻訳の市場は有り.
 ・タイ語, インドネシア語, アラビア語 : 翻訳の仕事は増加中. 特に、企業の技術者対象の語学研修が多い. この分野の専門家は、総合ビジネス・アドバイザ的になるケースが多い.
 ・その他の言語 : ベトナム語は、需要が急速に伸びている.これから伸びるものとして、タガログ語(フィリピン), ミャンマー語(ビルマ), ペルシャ語, ウルドゥー語が有る.
4.Summary : 語学のプロを以下の様に分類し、各々の仕事の概略とキャリア・アップの戦略が有る.
 1)語学の専門家になる (スペシャリスト・コース)
 (1)翻訳系
  ①出版翻訳 : 作家として芥川賞を取る事と同じ程度困難. これを仕事にするのは無謀.
  ②産業翻訳 : 実力が有れば生計を立てる事は可能だが、中途半端ではダメ. 実力試しには優良翻訳会社の試験(トライアル)を受けてみる.
 (2)通訳系
  ①国際会議同時通訳 : 要求レベルは最高度. 日頃の摂生・情報収集,体力・知力の維持が必要. 最も華やかな仕事.
  ②政府・官公庁通訳 : 同時通訳と同等のレベル. 民間から職に就くのは困難.
  ③観光案内ガイド : 「通訳案内業試験」に受かること. 体力・精神力・営業力が必要.
  ④技術関係通訳 : 産業翻訳の分野では最も人手が足りない. 理工系の語学を活かし易い.
  ⑤会議・商談の通訳 : その場での集中力が必要. 語学力も高い水準が要求される.
  ⑥芸能・スポーツ関係の通訳 : 例えば外国人野球選手の通訳等. 収入は良くない.
  ⑦モデルの撮影等の通訳 : 仕事としては比較的容易. 駆け出しの人の実力試し.
 (3)語学教師
  ①中学・高校・大学で教える : 教師への就職と同じ方法.
  ②民間の語学学校で教える : 全員外国人教師を売り物にする所が多いため機会少ない. 満足するポストが与えられる事は稀.
  ③自分で学校をつくって教える : 寺子屋的なものでも教室を開いた方が懸命.
  ④企業の語学研修で教える : 語学教師の分野では最もやりがいが有る.

 2)会社に勤めて組織の中で語学力を武器にする (ビジネスマン・コース)
  現実にはこの道が最も定員が多い. 「抜群の語学力を持つこと」と「組織の人材として優れること」とは相反する能力かも知れない.

 3)語学力を武器にして自分でビジネスを開く (企業家コース)
  21世紀は、一匹狼でも、組織の一員で有っても、人生に対して自己責任をとる必要のある時代. 個人がグローバルなインターネット・ビジネスで世界市場を相手にする際重要なのは結局のところ言語.


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