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「理系白書」 ・・・ 文系との戦争 [実用]


理系白書 この国を静かに支える人たち / 毎日新聞科学環境部 (編集)
1.My Review Rank : ★★★☆☆ +
2.Published Data : ¥600, 339Page,講談社,’06/06
3.Review Point : 本書は、毎日新聞の連載 「理系白書」の文庫化(2002年1月1日~1年4ケ月 64回, 単行本は2003年6月出版).
 全体は11章有るが、まず、第1章の「文系の王国」の頭に以下の様に有る.

 政界や官庁、企業のトップに立って「日本丸」のかじ取りをするのは、主に文系の出身者だ. 科学・技術が社会の隅々に入り込んできている今の時代に、日本が座礁したまま動きがとれないのは、理系人間の参加を認めようとしない「文系の王国」の弊害ではないか.

 第1章の「文系の王国」の話が一番切実. 以下の調査結果が有る.
1)生涯収入格差
 ある国立大の理系学部と文系学部(各々の学部の入学時点の偏差値はほぼ同じ)の卒業生全員に調査用紙を送って年収等を調査した所(回答約3400人)、理系の生涯収入の平均が3億8400万円なのに対して、文系は4億3600万円と5200万円の差が出た.
 理系の就職先がメーカ中心なのに対して、文系は金融機関が多いことも有るが、理系より文系の方が昇進しやすいことも影響している.

2)官僚の世界での昇進スピード格差
 官僚の世界では、出身学部で 「事務官」, 「技官」に分けられ、各々、文系, 理系に相当する. ここでポスト毎の「事務官」の比率を調査すると、以下の様にポストが高い程「事務官」の比率が高いことが如実に現れる.
  次官級(事務官比率97%), 局長級(87%), 審議官級(81%), 採用時点(45%).
 上位のポストの「技官」比率が低いことは、当然昇進のスピードが遅い事と同じになり、上記の生涯収入格差にもつながっている.

3)海外との理系進出度の格差
 上記のの官僚の世界に限らず、政界, 財界でも以下の様に、文系比率が高い.
  上場企業社長2143人(70%), 大臣18人(78%).
 これを海外の財界(上場上位企業)と比較すると、日本だけが理系比率が異常に低いことが分かる.
  日本2143人(理系比率28%), 英22人(54%), 独60人(54%), 仏101人(55%).
4.Summary : 著者は、現状に甘んじている理系の考え方・意識にも問題が有り、理系自らが変えていこうとしなければならないと言っているが、現在、よく問題と報道される 「大学での理系離れ」 は、「大学では実験等で忙しく、社会に出ても出世が遅く給料も安い理系は損」 が原因か.

 本書では、その他に、「青色発光ダイオードの中村修二さんの話」, 「博士号の悲哀」, 「教育現場の理系離れ」, 「理系の文化(オウム事件とオタク)」, 「女性研究者の難しさ」, 「変革されつつ有る大学」, 「研究の独創性(ノーベル賞)」 等が有り、結構身近に有る話.


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