「妻が得する熟年離婚」 ・・・ 敵を知る [実用]
妻が得する熟年離婚 / 荘司 雅彦
1.My Review Rank : ★★★☆☆ + 今年 何が起こるか.
2.Published Data : ¥756, 235Page,朝日新聞社,’06/10
3.Review Point : 年間離婚件数は、平成14年に約29万件でピーク をつけたのち減少を続けているが(平成16年は約27万件)、これは、2007年4月からの年金分割制度(離婚に際して配偶者の年金を分割)に関連すると言われる.
本書では、女性の立場から、 「離婚に伴う年金分割を含めた財産分与でいかに成功するか」 をポイントに、5つのストーリーで解り易く(且つ、生々しく)解説している.
2007年4月スタートの制度で、年金の分割割合は、納付期間で以下の様に定められる.
①2008年3月までの納付分
⇒分割割合は "最大で" 2分の1で、「配偶者の同意」或いは、「裁判所の決定」が必要となる(「原則として・・・」ではなく、「最大で・・・」が問題点).
②2008年4月以降の納付分
⇒分割割合は、 "無条件に" 2分の1 となる.
例えば、夫が30年間厚生年金を掛け、そのうち20年間、妻と結婚し、厚生年金の受給額が200万円の場合、
<2008年3月までに納付が完了している場合>
上記の「最大で2分の1」とは以下の式で133万円.
200万円(厚生年金受給額)÷30年(納付期間)×20年(婚姻期間)=133万円
<納付期間30年のうち、最後5年間が2008年4月以降となった場合>
上記の133万円のうち、133万円÷20年×5年=33万円が無条件に2分の1となり、133-33=100万円が最大2分の1の対象となる.
団塊の世代の退職を狙い撃ちしたかの様なこの制度により、離婚件数と裁判所での調停の急増は必至.
本書の5つのストーリーは全て女性のハッピーエンドに終わっているが、男性にとっては、女性が考えている事を知る手掛かりになる. 本書は「女性版」だが、「男性版」の出版も予告されている.
4.Summary : 本書での5つのストーリーは以下.
1)58歳 専業主婦 : サラリーマンの夫の退職に伴い離婚を宣言. 退職金を含めた財産をいかに獲得するか. 最も一般的な熟年離婚のケースと考えられるが、ポイントは以下.
・離婚後の住居の確保が重要(高齢で定職の無い一人暮らし女性は賃貸,ローンが困難).
・将来的な自分の要介護状態への対応(仲間での「相互介護契約」も一案).
・夫の退職金が確定してから離婚を宣言すること(年金のみならず退職金もターゲットに).
・事前に弁護士へ相談(費用関係は明確にする).
2)60歳 大手食品会社 正社員 : 離婚を前提に5年前に別居した夫(料理店経営)への慰謝料請求.
・財産分与の性格(清算的要素, 扶養的要素, 慰謝料的要素).
・財産分与の基準時は、基本的に別居時だが、本ストーリーでは大逆転.
3)56歳 都市銀行 正社員 : 妻よりも収入・貯蓄が遥かに少ない夫(自営業)の離婚宣言に対する資産防衛
・財産形成への貢献度は、専業主婦でさえ3分の1と評価される. 妻も働く場合は、夫の貢献度は相当低く見られる.
4)59歳 専業主婦 : 消費者金融の借金を残し失踪した夫との離婚手続き
・相手方不在でも、家裁での公示送達の手続きにより、離婚手続き可能.
5)56歳 専業主婦 : 脱税していた自営業(整体師)の夫が隠匿する財産の捜査と獲得.
・弁護士に依頼するしかない.
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